2015年03月20日

平群谷のイエローダイヤモンド

 信貴山へ向かう奈良県道250号線の途中に福貴畑(ふきはた)の集落がある。標高200mから400mの間の尾根沿いの狭間に80数世帯の民家が隣合わせに点在する。3月15日、日曜日。時々雨のぱらつく空模様だが、しっとりとした空気は写真撮影に申し分ない。

 車で登って来る途中処々に見かけたのと同じ黄檗色(きはだいろ)の樹花が、この福貴畑のいまだ冬の気配の残る谷間をよりきらびやかに彩っている。絵筆で描き加えたみたいだ。この景色、今までに一度も見たことが無い。あの樹、なんて名前なのだろう。それよりも、もっと良く見える、異なるアングルから撮ってみたい、と思った。

 P3162515青文字の谷.jpg
  「金色の樹影霞みて平群谷」 

 谷は見るからに深くまた急峻で、すぐ目の前に見えるあの黄檗色の樹に近づくには、U字状に迂回する山道を辿って行かざるを得ない。その山道も途中で別の方向へとそれてしまう。谷底に向かって開けた道を見つけては何度も降りてみたが、行き止まりだったり、路面が崩れ落ちたりしていて結局目指す場所に辿り着くことができなかった。
 信貴畑の集落も急速に高齢化が進んでいる。働き手を失った谷は荒れるに任せ、かつての里山は藪笹に覆われまた竹藪となり人の行く手を拒む。そんな放棄された谷間に限ってあの黄檗色の花の樹があるのだが。
思うにあの花は、実は集落のそんな状況を知らせる一つの旗印(サイン)なのかもしれない。「そこにはもうだれも住んでいないよ」って。
 
 P3152492青文字の谷.jpg

 樹の名前は意外に早くに判った。生け花用に木枝の伐りだしに来ていた農家の女性と出会い、聞くことができたのだ。
「あれは青文字(あおもじ)よ、ひとりでに勝手に生えて来るの」と。つまり植樹したものではないということか。きっと野鳥が熟した実を食べては、あちこちに種を落としたのだろう。だが、その青文字の花は平群町のこの山中でよく目にしたものの、奈良の他の地域では見た記憶がない。福貴畑のこの辺りは造園用の庭木が多く植え育てられている。おそらく最初の一本の青文字はこの地区の造園業者が植えたものであろう、と思うのだが。

 P3152478.JPG

 図鑑を見ると「青文字は台湾黒文字とも言い、原産地は台湾、マレーシア。クスノキ科の落葉小高木。中国・九州・沖縄などの山地に生える。雌雄異株。早春,雄花は濃黄色,雌花は淡黄色の花をつけ,のち黒紫色に熟する。材は芳香を持ち,楊枝(ようじ)などを作る。開花前の薄緑色の苞に包まれた状態のものが、生け花の材料に使われる。」とある。日本にいつ渡来したのかは分からない。
 それにしても、管理放棄され人の手の入らなくなった平群町の山林が、この黄檗色(きはだいろ)の青文字で覆われたなら、さぞ美しく壮観であろうことか。「黄金の山」あるいは平群町の「イエローダイヤモンド」と呼ばれそれそそれは評判になるかもね。
 ※
 
posted by ハマー at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 斑鳩・生駒 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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