2010年01月31日

斑鳩の隠れ里 白石畑

奈良斑鳩の白石畑(シライシハタ)の村落は、法輪寺から北西へ3km、矢田丘陵南端の山奥にある。まるで
隠れ里のようなこの村落は、YAHOOの写真地図を見ていて偶然見つけた。大蜘蛛が触手をひろげ
たような異様な形は、僅かな耕作地を求めて、狭い谷を逆のぼって造られた棚田なのだ。

 
 白石畑航空写真.JPG



地図に安楽寺と素佐男神社の名が見える。どんな古寺があるのか、山道を進む。道は意外にも、
舗装された二車線の車道だった。山の中腹に斑鳩町のごみの埋立地があり、そのために造成された
産業道路ということらしい。

集落の入口辺りの道路端に一体の石仏が安置されている。長く風雨に晒されて目鼻も分からない。
多分地蔵菩薩だろう。少し入ったところに六地蔵が見える。その先には村の墓所があるはずだ。
いずれの石仏にも新しい花が供えられ、周りも掃き清められている。村人の篤い信仰心が窺える。

 
 道端から見た六地蔵.jpg

 

白石畑村落の住人に、寺の在りかを訪ねるが「寺は無い」という。よくよく聞いてみると、集会所
に変わったというではないか。唖然。YAHOOの地図には「安楽寺」と記されているのだから、寺が
無くなったのはそんなに昔のことではあるまい。
どんな経過で寺が消えたのかは知らないが、この小さな村落が自ら寺を支えてゆくのは無理があっ
たのだろう。神社は今もあるという。
白石畑の名は永仁二年(1294)の東寺百合文書に見られる。また法隆寺の料田(学田)があったと記録
にある。「隠れ里」ということはなかったが、とにかく古くから続く村落であったことは間違いない。

 
 鳥居が覗く.jpg
 

神社は村の北のはずれの、一番の高台にあった。白石畑の住居は周りの水田よりかなり高い、島の
ようなところに密集している。丘陵の山頂付近にあるとは言え、雨が降れば周りの山からこの谷に
向けて大量の雨水が流れ込んでくるはずだ。狭い高台に軒を重ねるように住居が集中している理由が
わかる。神社はその高台の中の更に高い崖淵にあった。


 楠木と鳥居.jpg


素佐男神社(スサノオジンジャ)の鎮守(氏神)はスサノオ。スサノオは、イザナギとイザナミから生
まれた三人兄弟の弟。お姉さんがアマテラスで、ツクヨミ(月読命)とスサノオが兄弟になる。スサ
ノオは日本の神々の中でも最も強いキャラクターの持ち主で、神話に描かれたスサノオは荒れ狂う
暴風神であり、逆らう神であり、また大声で泣きわめく神であって、生き物を死に至らしめる。
『出雲風土記』にはスサノオが山の神や水の神だと記されている。この村落にぴったりの氏神では
ないか。


 鳥居の前藪椿落花.jpg


素佐男神社の境内に入ると月番で掃除の奉仕に来た女性がいた。別の村落から来ているという。
どの地域でも神社は氏子によって護られ維持されていると感じる。神社がコミュニティーの中心と
して今も機能しているのだろう。

冬の今、白石畑の棚田は、乾いた枯色の景色が広がるだけだが、桜や彼岸花の咲く時季には美しい景色を求めて多くのカメラマンが訪れると言う。
また一つ奈良の撮影ポイントができた。

見わせば細き乾田段々に 冬陽優しく降りし山里
藪椿紅き点々地に散し 鳥居の足もと飾るごとくに


posted by ハマー at 00:07| Comment(2) | TrackBack(0) | 斑鳩・生駒 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
白石畑に畑を借りました。まるで桃源郷の佇まいに興味を覚え検索していてここにきました。
歴史的にも興味深いものがありもっと調べたい思いにかられています。畑はもちろんですがいるだけで癒されることに感動しています。つづき読ませていただきます。
Posted by kayoko at 2015年07月06日 10:01
これまでに訪れた奈良の山里のなかでも白石畑は隠里の形容がまさにふさわしい処でした。冬でしたが緑深く、心和ませる気配があふれていました。夏の今どんな景色を見せてくれているのか分かりませんが、きっとえもいえぬ気配に満ち満ちているのでしょうか。
 斑鳩の山隠里梅雨ふかし しけのぶ
Posted by 浜四津 at 2015年07月07日 23:07
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