2010年01月09日

俵万智「短歌をよむ」に習う写真作法

『短歌を詠むはじめの第一歩は、心の「揺れ」だと思う。』
書店でこの文章を見て、迷わずこの本を購入した。俵 万智著「短歌をよむ」
※岩波新書 1993年10月20日 第1刷発行 2007年1月25日第20刷発行


 柳生街道山茶花.jpg
 柳生街道 正面に山茶花の赤い塊が見えた



『どんなに小さなことでもいい、なにかしら「あっ」と感じる気持ち。その「あっ」が種になって
歌は生まれてくる』

写真も同じだと思う。「奈良」という大きなテーマの中で、(モチーフとして)社寺、史跡、野山を
巡り歩いていて、行き過ぎた間際、なにかの残像が心を刺激する時がある。


 斑鳩の林内の木.jpg
 斑鳩の里 林の中、皺の寄った木が



『短歌を詠むとは、感動の種を言葉に育て上げることなのだ。(中略)自分の心が「あっ」と揺れた
ら、ただ揺れっぱなしにしておかないで、もう一度丁寧に見つめなおす。』


立ち止まり、「あっ」と感じたものの正体を探す。それは光であったり、形であったり、風に揺
れる枝葉だったり。手前の建物と遠くのものの重なりの形であったり、さまざまだ。


 東大寺の大鐘.jpg
 東大寺の大鐘 石段と鐘楼と背後の樹木のバランスがいい



『「あっ」と心が揺れた。何かに感じることができた。ではそれをどう言葉にしてゆくか、が次の
問題となる。心の揺れた場面から具体的に言葉を拾ったり、自分の思いを表す言葉を探したりしな
がら、なんとか三十一文字にしてみる・・・。』


 法隆寺西築地.jpg
 斑鳩の山 法隆寺の西築地に行き当たる 


何が自分の心を刺激したのだろう。「あっ」を感じたとき、その何かを確認する作業から、自分の
写真作法
は始まる。この大きな景色からどこを切り出すか、ワイドにするか望遠を使うか、絞値を
いくつにするか、前ピンにするか、後ピンにするか、見つけた「あっ」と対面しながら組み立て
して行く。
 

 二月堂大香炉を支える邪鬼たち.jpg
 二月堂の大香炉を支える邪鬼 見落としていた

 


『「実際の場面にはあった優しい気分」にこだわってみるか、あるいは多少強調されても核心部分
だけでいくかは、迷われるところ。前者のほうが広がりが出る場合もあるし、後者の方がすっきり
する場合もある。逆に前者には焦点がぼやけるおそれがあるし、後者には一人よがりになるおそれ
がある。』


 磐之媛陵の堀に映った青空.jpg
 皇后陵の堀に抜けるような青空が映っていた


短歌を詠む作業は、ほんとうに写真作法の過程と変わらないと思える。

『「あっ」と思った、その結果だけを歌にしたのでは、読んでいる人には何がなんだかよくわから
ない。「あっ」と思わせてくれた何かを、三十一文字にとりこみつつ、気持ちを表してゆくことが
大切なのだ、と思う。』『気持ちと事柄とのブレンド――――この配合によって、短歌の味わいは、
ずいぶん変わってくる。気持ちストレートの迫力と、事柄ストレートの説得力とを合わせた、オリ
ジナルブレンド。その最も香り高いブレンドを目指して、あーでもないこーでもないと言葉を配合
してゆくのが、短歌を作るということなのだろう。』


 猿沢の池に浮かぶ石碑.jpg
 雨の猿沢の池 こんなところに石碑があった


「あっ」と感じさせたものはアレだ。じゃアレを引き立てているのは何だろう。あれの置かれてい
る状況を表すものは何だろう。前景にこの花を置いて、空を少しだけ残して、アレの大きさはどれ
くらいにするか、と景色をブレンドして行く。写真を作る、つまり構図を決める作業と、短歌を作
るということは、具体的に良く似ている。


 唐招提寺金堂釘隠し.jpg
 唐招提寺金堂の釘隠 スバラシイ



この本「短歌をよむ」は、写真を撮るという作図作業を高めてゆく上で、実にわかりやすいテキ
ストに代わる。「題詠み」「推敲」「連作」の節にも、多くのサジェスチョンがある。

俵万智のこの本を読んでいるうちに、明日、もう一度東大寺へ行って見ようと思った。今持ってい
るイメージ、過去に写真で捉えたイメージは忘れて、目と心を開いて「あっ」を感じに行こうと
思った。

今日の日記は、「あっ」を感じた時に撮った写真で占める。いや閉める。掛詞。結構学習できた。

posted by ハマー at 01:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 奈良のこといろいろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。