2011年12月16日

春日山の冬紅葉 稲畑汀子の句に寄せて

季語に「冬紅葉」がある。紅葉といえばふつう秋の風物だけど、初めて「冬」という字を頭に添えた
俳人の感性に敬服する。

稲畑汀子の句 『冬紅葉こぼれし夕日集めけり』

 s-PC129781いろは楓.jpg 

「こぼれし」は木漏れ日のことだろうか。或いは雲の切れ間から覗いた夕日ことだろうか。冬の夕暮
れ、時折雲間から差し込む陽の光を受けてさらに色鮮やかに燃えるもみじ葉の輝きを思い描くことが
できる。

『冬紅葉絵巻山路の九十九折』
『ようやくに色ととのへり冬紅葉』

 s-PC129766春日山遊歩道五色もみじ.jpg 

春日山遊歩道の登山口から500mほど上がった初めてのヘアピンカーブのあたりに「五色もみじ」の見
られる場所がある。11月の初めに通ったときに知った場所だ。
12月12日、もう遅いかもしれないと案じつつ、春日山の坂道を登った。行く道に厚く積もった土色の
山もみじの落葉を見るにつけ、ちょっと心が揺らぐ。
それでもヘアピンカーブに近づくにつれ行く先々に色づいたヤマモミジが見える。五色もみじは一本
の木ながら葉が五色に変化しながら染まって行くらしい。見ればたしかに複雑な色合いをしている。
紅葉した幾本かの木それぞれもまた異なった色を見せている。まだ緑色の葉を見せている木も目立
つ。きっぱりと朱にそまった紅葉に比べなんだが情けないようなちょっと残念な気もするが、これが
「五色もみじ」の紅葉なのだろう。

 s-PC129742春日山遊歩道紅葉.jpg 

『散り尽くすまでの変幻冬紅葉』
『同じ赤なかりしことも冬紅葉』

葉の落ち切るまですこしずつ色変わりしてゆくという冬紅葉だが、その変わりようを「変幻」とすると
はなんと美しく気ままな表現だろう。
冬紅葉の美しさは、すでに終わったと思っていたものを再び見つけたときの喜びであり、つかの間と
はいえ、色を失ってしまった冬の野山の味気なさを救ってくれる時季遅れり紅葉への感動であろう。
同じ赤い色を見せる草木が見えない野山に独りあるからこそ冬の紅葉は美しいと。

 s-PC129723冬紅葉地蔵院.jpg 

『極めるといふは狭路の冬紅葉』

「狭路」とは細い道或いは小道のこと。多分、家の前やごく身近な生活道路のこと。外出の行き来に
毎日のように通る小道の際に植栽された紅葉を詠ったものだろう。初秋から晩秋、そして仲冬の時季、を通したもみじ葉の色変わりを見つめた一句。極めるというのはそういうことにちがいない。

稲畑貞子は「冬紅葉」の句を実に多く詠んでいる。数えたことはないが30句以上あると思う。
稲畑汀子は子規や祖父である虚子の流れを汲む写生派の俳人であるので、その句は写実的であり、あ
りがたいことに詠まれたその光景を容易に思い描くことができる。しかしまれに、どうにも絵の浮か
ば句がある。

『これよりはあるがままなる冬紅葉』

他の俳人の句にしても、なんか気になるのだがどうにも腑に落ちない解らない句というもりがある。
解らないから余計に気になって忘れられない句のひとつになる。しかし、ある日突然にその句そのま
まの景色に遭遇し、一瞬にしてその意味の解ることがある。「冬紅葉」の時季はもう幾日もないが、
「これよりはあるがままなる冬紅葉」の句、どんな景色の中にみえるのだろう。
posted by ハマー at 20:29| Comment(1) | TrackBack(0) | 奈良公園周辺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月14日

平城山の晩秋から初冬の景色

照葉樹の雑木に覆われた平城山(ならやま)は11月の下旬から12月初旬までに麓から頂上まで朱赤に染
まる。この時季、この山に限らず奈良市街地周辺の道を走ればどこまでも続く紅葉の山々を見ること
ができる。

 s-PC039585ならやま初冬.jpg

その紅葉も冬の寒波にあえばたちまちに色褪せた枯れ色になる、そして冷たい風が一枚一枚と衣服を
剥いでゆくように枝の色葉を徐々に落として行く。
しかし葉を落としてすっきりと明るさを取り戻した雑木の森は、今度は暖かな淡黄色の彩りに満たさ
れる。クヌギ、エノキ、針桐、タカノツメやまだ多くの黄葉が平城山を彩る。
平城山の晩秋から初冬にかけての紅葉黄葉に変わる様を見る時、自然の持つ不思議さというか奥の深
さみたいなものに圧倒させられまた魅了される。

 s-PC039613コナラの森.jpg s-PC029575錦葉.jpg

尾根と尾根の間に広がる谷地田の景色もまた独特のものがある。谷地の真ん中の小山は元明天皇陵
だ。千数百年前に造られた陵墓も今では自然の一部になってしまったように見える。だがしかし平城
山は佐紀盾列古墳群(さきたてなみこふんぐん)と呼ばれる4世紀末から五世紀前半に造られた王墓を
含む皇族・豪族の古墳の広がる地域で、奈良では「小山をみたら古墳と思え」といわれているくらい
古墳の多い土地だが、そういう視点で見るとまるでここが死者の谷のようにも思えてくる。

奈良山は、紅葉、黄葉そして枯れ色と変わる晩秋から初冬にかけての景色がもっとも見ごたえがあ
る。

 s-PC109661ならやま谷地田.jpg



 
posted by ハマー at 00:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 奈良公園周辺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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